大人の夏休み その4 / 2006年08月30日
テニスを愛する皆様、ご機嫌いかがですか?勝村政信です。
不思議な天気が続いています。中途半端。
涼しいんだか、あっちいんだか、雨なんだか、曇ってんだか、晴れてんのか。結局、天気に気持ちが激しく揺さぶられている事に気づいて、可笑しくて顔がほころんでしまう。東京は夏がとても短かった。
人生を折り返し、カウントダウンの始まる年代になると1日や、ひと夏が愛おしい。1日を大切に過ごそうと考えるんだけど、ちゃんと出来た事がない。いつも夏が来る前はこんな事しよう、あんな事しようと考えるんだけど、思うように行ったためしがない。
横をみると、のぼるくんが何かを食べている。見てみると観葉植物の枯れた葉っぱだ。時々悔しくなるほど羨ましく思う。
のぼるくん。
随分前に名古屋の知り合いから、8月26日に行われる「大曲の花火」に誘われた。
よくわからなかったけど、すごいらしい。
一応カレンダーに印をつけた。
しかし、今年は夏休みもとれなかったから、すぐに丁寧に断った。
すっかり忘れていた。
先週、ドラマの脚本が遅れた。大幅に。
急に週末の仕事がなくなってしまった。本がないんだもの。
ちょっと可笑しかった。人生いろいろな、予期せぬ事がたくさんおこる。
でも、何もする事が無い。
先週の土日は、この二ヶ月で初めて蹴球の試合もなかった。
何もする事が無い。
突然の休日。
僕の家族はまとまった休みのとれない僕を早々と見限り、海外に旅立って行った。そして、入れ替わりに兵藤ゆき姉親子が我が家に住んでいる。
愛の家族かい。
今年は何処にも泊まりで出掛けていない。
まー、杉本哲ちゃんたちと飲みに行くと、ほとんど朝まで飲んでるから泊まりに出掛けているのとかわらないが、、、
どーしよーかなー?やっぱり飲みに行っちゃおうかなー?
と、何気なくカレンダーを見た。26日に「花火」と書いてある。
何だこれ?
すぐには思い出せなかった。
「あー!」
思い出しちゃった。花火に誘われてたんだぁ!断ったんだけど、、、
何処だっけか?そーだ、秋田だ。秋田?とーいなぁー。どーしよーかなー?
ちょっと迷った。
でも神様のくれた折角の短い夏休み。ちょっと冒険してみる事にした。
しかし、相手の事情もある。とりあえず名古屋に電話してみた。
「あー、かっちゃん。珍しい。やっとかめ。(八十日目と書く。名古屋の人の久しぶりと言う意味)どしたの?」
「あのー、前に花火に誘っていただきましたよね?僕も行っていい?」
「おー、かっちゃん。あんた運のいい人だね。一人急にいけんよーになってな、 ちょーどよかった。じゃあ、昼ごろ角館の駅で待ち合わせよー」
ってな事で、偶然と奇跡が重なり秋田の大曲の花火に参加する事になった。
しかし、よく考えてみたら一人旅は多分初めてだ。ちょっと不安になってきた。
旅には慣れているつもりだ。でも考えてみたらほとんど全部仕事。
全て用意されている。だいじょぶかな?
さらに不安になりかけた時に携帯がなった。
名古屋のおじちゃん。
「あー、かっちゃん。わしら名古屋から飛行機で行くんだけど、かっちゃんは○○時の新幹線がええと思うんだけど、チケットとれんかもしれんよ」
「は?」
「人が多いから」
「は?」
渋谷にチケットを買いに行った。満員だった。
何だそれ?
一本前の新幹線のグリーン車のチケットが1枚だけ!1枚だけあった。
何だそれ?
勇気を出して、たった1枚残っていたグリーン車のチケットを買った。
ま、とりあえず行ける。
何故か今回の旅は奇跡を呼ぶ。花火が「俺」を呼んでいる。
奇跡が「俺」を呼んでいる。どーしても「俺」を呼んでいる。
なにがなんでも呼んでいる。と思う。
神様が味方してくれている。かならずいい事がある。はずである。
ちょっと調子に乗った。
いよいよ土曜日。新幹線に乗り込んだ。やっぱり満員だった。
角館に着くと太陽が照りつけてきた。太陽がおいしい。
空気が澄んでいる。ちょっと呼吸を多めにしてみた。
空気も太陽も風もおいしい。
1本早かったので、時間をつぶそうと思ったが面倒くさいので連絡してみた。
「着きました」
「おー、早いなぁ。ちょーど飯食おーと店に入った所だからタクシーでおいで」
「わかりました」
ラッキー!ちょーどお腹が空いていたのだ。
やはり「俺」を呼んでいる。食事も「俺」を呼んでいる。
タクシーに乗り込み店の名前を言った。有名な料亭らしくすぐに運転手さんが「わかりました」とちょっとなまった返事をしてくれた。いい感じ。
やはり、地方の一番のごちそうは「訛り」だ。
なんだかホッとする。
2分もたたないうちに「着きました」と言われた。
「おい!歩くよ、こんな距離。言えよ!近いって!」と心の中の叫び声を飲み込んだ。
店に入ると誰も出て来ない。「あれ?」
「すみません」クレッシェンドで何度か叫んだ。
それでも応答がない。上がってみる事にした。
1階の奥に、おばあちゃんがいた。
目があった。
少し間があって「ん?」と言われた。
「『ん?』じゃねーだろ?客だよ客」また飲み込んだ。
「あのー、6人の予約の人が食事していると思うんですが?」
「ん?」
「だから、『ん?』じゃねんだよ」もちろん飲み込んでいる。
「あのぉ、6人連れがご飯食べているんですが、何処にいます?」
「おー、んじゃ、よす子にきげ」
「ん?」今度は僕が言ってしまった。
「だがら、よす子にきげ」
らちがあかない。
しばらくすると、他の女性がきた。(よす子?よし子?さんらしい)
同じ事を説明すると、「ここをまっすぐいっで、おぐをひだりにいっで、みぎっがわになります」説明だけで案内はしてくれなかった。そしてすぐいなくなった、、、
おばあちゃんとかわらなかった。
行こうとしたら、さっきのおばあちゃんが「スリッパはいてげ」と小さな声で言った。
奥の座敷に入ると知らない人だらけだった。僕より20歳以上うえ。
知り合いにおじちゃん夫婦。もーひと夫婦。おじちゃん2人。
さっそく紹介してもらった。
え~、けんちくの関係の○○さんと石油の関係の○○さんとたまごやさん。
簡単な紹介だが、知り合いのおじちゃんは、僕が10年前に名古屋で「近松心中物語」という舞台をやった時に、共演の坂東三津五郎さんに紹介していただいた。名古屋でも指折りの料亭の方である。粋できれいな「遊び」を教えてくれた、僕の人生の師匠の一人である。
そのおじちゃんのお友達。どんな人たちかは簡単に想像がつく。
でも、すごい人たちは大体何処かいい意味で欠けている。
昼からビールを飲みながら、地元の山菜中心の料理を食べた。
繊細な味付けで実においしかった。
みなさん流石に話題が豊富で、山菜の名前、生えている場所、料理法など、他にも僕の知らない事をたくさんユーモアを交えて話してくれた。「へぇ~」の連発だった。(ちょっと古い?)
岩魚の焼き物を食べている時に、隣のたまごやさんが「あれぇ~、これめずらしいわ。ほらぁ、内臓の中にまだ消化しとらん餌がはいっとるでぇ」
見ると、芋虫みたいなのが3匹胃袋の中で燻されていた。
普通は、「うわ!気持ち悪ぅ~」みたいなことになると思うんだが、みなさまキモが座ってます。「ほぉ、餌食べてすぐに釣られたんだ、腹減っとったんだ~。
がっはっは」とか、「昔食べた天然のうなぎに釣り針が入っててな」などと笑っている。ちょうど料理を運んできたよす子さんにたまごやさんが、「ほれ、魚に虫が入っとるよ」するとよす子さん顔をしかめて気持ち悪そうに(これが普通だよね)しながらも、クレームだと思い、「す、すみませ、、」と言い終わらないうちに、たまごやさん箸で芋虫さわりながら「食べてみようかなぁ~」だって。
もー、さすがに僕は大爆笑。よす子さんは困っているし、結局食べなかったけど、すごい人は発想が違う。
その間も飛行機事故の話とゴルフの話と1日10km以上歩く話がシンクロしている。楽しそうに飲んでいた「けんちくさん」が、急に「え?飛行機からキャディーさんが歩いて落ちたの?」と、もーわけわかんない。
イレギュラーの僕が入ったので少し空間が歪んでいたのは確かだが、楽しくて仕方なかった。石油さんの石油話は、びっくりの連続。書けない事もたくさん話してくれた。1バレルが何故159リットルだか知ってる?
タンクローリーが何であの形か知ってる?(誰に聞いてんだっつーの)
僕は知ったばっかり。
宿に着いて温泉に入って準備を整えた。バスで出発。他に10数人が集まっていた。そして僕の動きが止まった。
バスには、「藤原養鶏場様」と書いてあった。
あー、参加してよかった。秋田まできてよかったとこの時思った。
こんなバスに昔から乗ってみたかった。
「藤原養鶏場様」。やったー!
思い切ってグリーン車できてよかった。
感動さえしてしまった。
おじちゃんだらけ。
最初はみんな馬鹿にしてた。しかし、帰りにはこの旗のおかげで、全員無事に帰れた。なんせ75万人。
我らが「藤原養鶏場様」一行は大曲に着いた。
そした鶏の黄色い旗を掲げ期待を胸に川に向かった。
場所は川の1番前。花火の事を細かく書くと長過ぎて読み飽きてしまうと思うので、僕からのささやかなプレゼント。
その時の写真をがんばって携帯でこのブログのために撮ってきました。
参加者は75万人だったそうだ。
帰りがどれほど大変で、どれほど楽しかったかは想像に任せます。
帰りは地獄。
川の一番前で見ることが出来たプラチナチケット。
これを見て2006最後の夏を楽しんで下さい。
すごいでしょ。来年は足を運んで、素晴らしい花火師のみなさんに拍手してあげて下さい。
とにかく桁外れ。こんな凄いのは見た事無かった。2時間以上花火を見ていて少しも飽きなかった。
神様、どーもありがとう。
それから、来週はまぁ~た藤原のボケがどっか行くらしくて、更新が木曜日になりそうです。ったく!度し難いよ。(って、自分で更新しろって)
そんな訳で、今週もがんばって生きていきまっしょい!
全然関係ないけど、駅前のデパートの靴売り場。
棚が全部長靴。考えられない。こんなの初めて見た。感動のおすそわけ。
『大人の夏休み』 その4。
続き。
もう「カブうじゃ公園」(面倒くさいから縮めます)なんか楽勝じゃん。やっぱ素人は素人。ひっこんでろい!って感じ。
「一騎田中」が、いや「一騎田中様」が神々しく見えた。
昼間のうちに、第一のトラップを仕掛けた。
「一騎田中様」の眼鏡の奥の眼光が鋭い。木を一本一本「吟味」、いや、「ガン見」している。
木に「ガン」飛ばしている大人を初めてみた。
勝村さん、この木のこことか(うろのある所など)こことか(樹液が出ている場所)にこれくらいの間隔で止めて下さい。
丁寧にトラップを仕掛ける場所を指示してくれている。
興奮している僕は、既に適当に仕掛け始めていた。奥に入るのが恐いから道路の横の木とか、ガードレールとか適当につけていた。
後ろで、青い炎を感じた。
振り返ると「一騎田中様」がいた。
目を吊り上げて、『何をやってるんですか!勝村さん。そんなとこにつけても集まる訳ないでしょ!』と怒鳴られ、激しく叱られた。
「一騎田中様」の目には、「このバカ、何にもわかんねえくせに勝手はことしやがって、叩き切ってやる!」みたいな光線が出ていた。
「勝村よ。カブトムシがガードレールにとまるのか?あん?少しは考えて行動しろよ。バーカ!」と言われた。
実際には、「勝村さん、カブトムシはガードレールにとまらないでしょ」だったと思うけど、「一騎田中」の目を見ていると、恐くて、そんな風に聞こえてしまった。
しかし、もーしっかりと取り付けてしまったので、仕掛け直すのは面倒くさいし大変なので、「もーそのままでいいっすよ」と半笑いで言われた。
しかも「このガードレールにカブトムシが付いてたら、僕の大事なヘラクレスオオカブトをあげますよ」なんて事もで言われた。
少し恥ずかしかった。
そして夜。第二のトラップ。
昼間のうちに、じっくり選んだ場所にトラップを仕掛けた。
大掛かりなトラップなので、三人で懸命につくった。
いよいよ発電機をまわし、明かりを灯した。
全員で拍手。
感動した。
これで、「カブじゃ公園」(こんなんだっけ?)計画にリーチがかかった。
「光が安定するまで休憩しましょう」と自信たっぷりに微笑む「一騎田中様」が、コンバットのサンダース軍曹に見えた。(知らない人ごめんね)
なんて頼もしい。
休み始めたと思ったら、光が安定もしていないのに虫が集まり始めた。
「うぉー」思わず全員が叫んだ。
小さな虫や、蛾が多かった。
ここで「一騎田中軍曹様」が、「最初のうちは小さな蛾などが多いです。時間が経つと、蛾のサイズがどんどんでかくなってきます。カブトムシなどの甲虫は身体が重く飛ぶのが大変なので、明かりを見つけてから到着するまで時間がかかるのです。まー、後、一時間もすれば、がんがん飛んできますよ」
さすがプロ。さすが軍曹。虫を知りつくしている。
説明も論理的で淀みがない。
「軍曹」の説明の途中にもどんどん虫が集まっている。しかも説明通りで、蛾のサイズが大きくなってきている。その中にカミキリ虫等の甲虫も見られるようになってきた。その度に僕らは歓声をあげる。
歓声が悲鳴に変わったのは、蛾のサイズがマックスに達したからだ。
な、なんと、僕の手のひらくらいの「怪物みたいな俄」くんたちが(「蛾い物」と名付けた)(あんまりうまくない)バサバサと音をたてて現れ始めた。鱗粉をまき散らし、僕らに向かってくる輩までいる。
あちらこちらで悲鳴が聞こえる。しかし僕には、逃げ惑いながらも聞こえて来る悲鳴に酔いしれていた。
代々木公園で歓びの声をあげる子供達。
木々の間を疾走する正三じいちゃん。
飛び回るカブトムシ。
しかも全部度アップ。
そんな映像が僕の頭の中を走馬灯の様にまわっている。
さー、後は僕らのヒーロー、カブトムシだ。
そして待つ事三時間。
ヒーローは未だ現れない、、、、、、。
映画だったら既に街は破壊されている。
「軍曹」の額や背中が冷たい汗でびっしょりになっている。
そして一言。「場所かえましょう」
僕とマギー、そして疲れの見えてきたスタッフの冷たい視線に耐えられなかったのか、「田中」は(もー軍曹ではなくなっている)一人、トラップを片付け始めた。
場所を移し、気分も新たにした。
「田中」は、「すみません。ここかさっきの場所か迷ったんですが、初めからここにすればよかったんです。」少し引きつり気味に「田中」は言った。
スタッフも、ここではもう失敗は許されない。
作品の出来が変わってしまうからだ。
ディレクターが離れた場所で考え込んでいる。
多分、オプションを繋ぎ始めているのだろう。
才能のあるディレクターは、ロケに入る前に様々なオプションを用意している。
ノー天気に、「山に行けばカブトムシがたくさん捕れる」。
なんて考えてはいないのだ。
たくさん捕れた時。
少ししか捕れない時。
全然捕れなかった時。
をロケに行く前から予測して、現場でのイレギュラーを楽しむ。
ノー天気にカブトムシがうじゃうじゃ捕れると思っていたのは、僕とマギーだけだ。
「田中」なんて書いているが、田中さんだって、そーゆー予測は当然している。
なにせ相手は自然だ。人間の考えなど軽く一蹴されてしまう。
だから田中さんも昼のうちに数カ所ポイントは、当然の様に押さえている。これもプロの作業の一つである。
さー、時間もなくなってきた。既に12時をまわっている。5時前には空が明るくなる。第一のトラップも仕掛けてある。あまり遅くなると折角集まっているカブトムシが帰ってしまう。
明かりがついた。またしても小さな虫がすぐに集まってくる。
しかも今回は、大きな虫たちの集まりが早い。汗が引き、目に力の戻ってきた田中さん。小さな声で「ここはいいですよ」と呟く。
またしても、悲鳴があがった。
笑っちゃうくらいの「蛾い物」が、ぶっさぶっさと飛んで来る。
見た事のないサイズに、僕らは悲鳴をあげる事しか術がないのだ。
楽しいし、恐いし、もう、たまらない快感である。
悦楽にひたる僕ら。
不思議な天気が続いています。中途半端。
涼しいんだか、あっちいんだか、雨なんだか、曇ってんだか、晴れてんのか。結局、天気に気持ちが激しく揺さぶられている事に気づいて、可笑しくて顔がほころんでしまう。東京は夏がとても短かった。
人生を折り返し、カウントダウンの始まる年代になると1日や、ひと夏が愛おしい。1日を大切に過ごそうと考えるんだけど、ちゃんと出来た事がない。いつも夏が来る前はこんな事しよう、あんな事しようと考えるんだけど、思うように行ったためしがない。
横をみると、のぼるくんが何かを食べている。見てみると観葉植物の枯れた葉っぱだ。時々悔しくなるほど羨ましく思う。
のぼるくん。
随分前に名古屋の知り合いから、8月26日に行われる「大曲の花火」に誘われた。
よくわからなかったけど、すごいらしい。
一応カレンダーに印をつけた。
しかし、今年は夏休みもとれなかったから、すぐに丁寧に断った。
すっかり忘れていた。
先週、ドラマの脚本が遅れた。大幅に。
急に週末の仕事がなくなってしまった。本がないんだもの。
ちょっと可笑しかった。人生いろいろな、予期せぬ事がたくさんおこる。
でも、何もする事が無い。
先週の土日は、この二ヶ月で初めて蹴球の試合もなかった。
何もする事が無い。
突然の休日。
僕の家族はまとまった休みのとれない僕を早々と見限り、海外に旅立って行った。そして、入れ替わりに兵藤ゆき姉親子が我が家に住んでいる。
愛の家族かい。
今年は何処にも泊まりで出掛けていない。
まー、杉本哲ちゃんたちと飲みに行くと、ほとんど朝まで飲んでるから泊まりに出掛けているのとかわらないが、、、
どーしよーかなー?やっぱり飲みに行っちゃおうかなー?
と、何気なくカレンダーを見た。26日に「花火」と書いてある。
何だこれ?
すぐには思い出せなかった。
「あー!」
思い出しちゃった。花火に誘われてたんだぁ!断ったんだけど、、、
何処だっけか?そーだ、秋田だ。秋田?とーいなぁー。どーしよーかなー?
ちょっと迷った。
でも神様のくれた折角の短い夏休み。ちょっと冒険してみる事にした。
しかし、相手の事情もある。とりあえず名古屋に電話してみた。
「あー、かっちゃん。珍しい。やっとかめ。(八十日目と書く。名古屋の人の久しぶりと言う意味)どしたの?」
「あのー、前に花火に誘っていただきましたよね?僕も行っていい?」
「おー、かっちゃん。あんた運のいい人だね。一人急にいけんよーになってな、 ちょーどよかった。じゃあ、昼ごろ角館の駅で待ち合わせよー」
ってな事で、偶然と奇跡が重なり秋田の大曲の花火に参加する事になった。
しかし、よく考えてみたら一人旅は多分初めてだ。ちょっと不安になってきた。
旅には慣れているつもりだ。でも考えてみたらほとんど全部仕事。
全て用意されている。だいじょぶかな?
さらに不安になりかけた時に携帯がなった。
名古屋のおじちゃん。
「あー、かっちゃん。わしら名古屋から飛行機で行くんだけど、かっちゃんは○○時の新幹線がええと思うんだけど、チケットとれんかもしれんよ」
「は?」
「人が多いから」
「は?」
渋谷にチケットを買いに行った。満員だった。
何だそれ?
一本前の新幹線のグリーン車のチケットが1枚だけ!1枚だけあった。
何だそれ?
勇気を出して、たった1枚残っていたグリーン車のチケットを買った。
ま、とりあえず行ける。
何故か今回の旅は奇跡を呼ぶ。花火が「俺」を呼んでいる。
奇跡が「俺」を呼んでいる。どーしても「俺」を呼んでいる。
なにがなんでも呼んでいる。と思う。
神様が味方してくれている。かならずいい事がある。はずである。
ちょっと調子に乗った。
いよいよ土曜日。新幹線に乗り込んだ。やっぱり満員だった。
角館に着くと太陽が照りつけてきた。太陽がおいしい。
空気が澄んでいる。ちょっと呼吸を多めにしてみた。
空気も太陽も風もおいしい。
1本早かったので、時間をつぶそうと思ったが面倒くさいので連絡してみた。
「着きました」
「おー、早いなぁ。ちょーど飯食おーと店に入った所だからタクシーでおいで」
「わかりました」
ラッキー!ちょーどお腹が空いていたのだ。
やはり「俺」を呼んでいる。食事も「俺」を呼んでいる。
タクシーに乗り込み店の名前を言った。有名な料亭らしくすぐに運転手さんが「わかりました」とちょっとなまった返事をしてくれた。いい感じ。
やはり、地方の一番のごちそうは「訛り」だ。
なんだかホッとする。
2分もたたないうちに「着きました」と言われた。
「おい!歩くよ、こんな距離。言えよ!近いって!」と心の中の叫び声を飲み込んだ。
店に入ると誰も出て来ない。「あれ?」
「すみません」クレッシェンドで何度か叫んだ。
それでも応答がない。上がってみる事にした。
1階の奥に、おばあちゃんがいた。
目があった。
少し間があって「ん?」と言われた。
「『ん?』じゃねーだろ?客だよ客」また飲み込んだ。
「あのー、6人の予約の人が食事していると思うんですが?」
「ん?」
「だから、『ん?』じゃねんだよ」もちろん飲み込んでいる。
「あのぉ、6人連れがご飯食べているんですが、何処にいます?」
「おー、んじゃ、よす子にきげ」
「ん?」今度は僕が言ってしまった。
「だがら、よす子にきげ」
らちがあかない。
しばらくすると、他の女性がきた。(よす子?よし子?さんらしい)
同じ事を説明すると、「ここをまっすぐいっで、おぐをひだりにいっで、みぎっがわになります」説明だけで案内はしてくれなかった。そしてすぐいなくなった、、、
おばあちゃんとかわらなかった。
行こうとしたら、さっきのおばあちゃんが「スリッパはいてげ」と小さな声で言った。
奥の座敷に入ると知らない人だらけだった。僕より20歳以上うえ。
知り合いにおじちゃん夫婦。もーひと夫婦。おじちゃん2人。
さっそく紹介してもらった。
え~、けんちくの関係の○○さんと石油の関係の○○さんとたまごやさん。
簡単な紹介だが、知り合いのおじちゃんは、僕が10年前に名古屋で「近松心中物語」という舞台をやった時に、共演の坂東三津五郎さんに紹介していただいた。名古屋でも指折りの料亭の方である。粋できれいな「遊び」を教えてくれた、僕の人生の師匠の一人である。
そのおじちゃんのお友達。どんな人たちかは簡単に想像がつく。
でも、すごい人たちは大体何処かいい意味で欠けている。
昼からビールを飲みながら、地元の山菜中心の料理を食べた。
繊細な味付けで実においしかった。
みなさん流石に話題が豊富で、山菜の名前、生えている場所、料理法など、他にも僕の知らない事をたくさんユーモアを交えて話してくれた。「へぇ~」の連発だった。(ちょっと古い?)
岩魚の焼き物を食べている時に、隣のたまごやさんが「あれぇ~、これめずらしいわ。ほらぁ、内臓の中にまだ消化しとらん餌がはいっとるでぇ」
見ると、芋虫みたいなのが3匹胃袋の中で燻されていた。
普通は、「うわ!気持ち悪ぅ~」みたいなことになると思うんだが、みなさまキモが座ってます。「ほぉ、餌食べてすぐに釣られたんだ、腹減っとったんだ~。
がっはっは」とか、「昔食べた天然のうなぎに釣り針が入っててな」などと笑っている。ちょうど料理を運んできたよす子さんにたまごやさんが、「ほれ、魚に虫が入っとるよ」するとよす子さん顔をしかめて気持ち悪そうに(これが普通だよね)しながらも、クレームだと思い、「す、すみませ、、」と言い終わらないうちに、たまごやさん箸で芋虫さわりながら「食べてみようかなぁ~」だって。
もー、さすがに僕は大爆笑。よす子さんは困っているし、結局食べなかったけど、すごい人は発想が違う。
その間も飛行機事故の話とゴルフの話と1日10km以上歩く話がシンクロしている。楽しそうに飲んでいた「けんちくさん」が、急に「え?飛行機からキャディーさんが歩いて落ちたの?」と、もーわけわかんない。
イレギュラーの僕が入ったので少し空間が歪んでいたのは確かだが、楽しくて仕方なかった。石油さんの石油話は、びっくりの連続。書けない事もたくさん話してくれた。1バレルが何故159リットルだか知ってる?
タンクローリーが何であの形か知ってる?(誰に聞いてんだっつーの)
僕は知ったばっかり。
宿に着いて温泉に入って準備を整えた。バスで出発。他に10数人が集まっていた。そして僕の動きが止まった。
バスには、「藤原養鶏場様」と書いてあった。
あー、参加してよかった。秋田まできてよかったとこの時思った。
こんなバスに昔から乗ってみたかった。
「藤原養鶏場様」。やったー!
思い切ってグリーン車できてよかった。
感動さえしてしまった。
おじちゃんだらけ。
最初はみんな馬鹿にしてた。しかし、帰りにはこの旗のおかげで、全員無事に帰れた。なんせ75万人。
我らが「藤原養鶏場様」一行は大曲に着いた。
そした鶏の黄色い旗を掲げ期待を胸に川に向かった。
場所は川の1番前。花火の事を細かく書くと長過ぎて読み飽きてしまうと思うので、僕からのささやかなプレゼント。
その時の写真をがんばって携帯でこのブログのために撮ってきました。
参加者は75万人だったそうだ。
帰りがどれほど大変で、どれほど楽しかったかは想像に任せます。
帰りは地獄。
川の一番前で見ることが出来たプラチナチケット。
これを見て2006最後の夏を楽しんで下さい。
すごいでしょ。来年は足を運んで、素晴らしい花火師のみなさんに拍手してあげて下さい。
とにかく桁外れ。こんな凄いのは見た事無かった。2時間以上花火を見ていて少しも飽きなかった。
神様、どーもありがとう。
それから、来週はまぁ~た藤原のボケがどっか行くらしくて、更新が木曜日になりそうです。ったく!度し難いよ。(って、自分で更新しろって)
そんな訳で、今週もがんばって生きていきまっしょい!
全然関係ないけど、駅前のデパートの靴売り場。
棚が全部長靴。考えられない。こんなの初めて見た。感動のおすそわけ。
『大人の夏休み』 その4。
続き。
もう「カブうじゃ公園」(面倒くさいから縮めます)なんか楽勝じゃん。やっぱ素人は素人。ひっこんでろい!って感じ。
「一騎田中」が、いや「一騎田中様」が神々しく見えた。
昼間のうちに、第一のトラップを仕掛けた。
「一騎田中様」の眼鏡の奥の眼光が鋭い。木を一本一本「吟味」、いや、「ガン見」している。
木に「ガン」飛ばしている大人を初めてみた。
勝村さん、この木のこことか(うろのある所など)こことか(樹液が出ている場所)にこれくらいの間隔で止めて下さい。
丁寧にトラップを仕掛ける場所を指示してくれている。
興奮している僕は、既に適当に仕掛け始めていた。奥に入るのが恐いから道路の横の木とか、ガードレールとか適当につけていた。
後ろで、青い炎を感じた。
振り返ると「一騎田中様」がいた。
目を吊り上げて、『何をやってるんですか!勝村さん。そんなとこにつけても集まる訳ないでしょ!』と怒鳴られ、激しく叱られた。
「一騎田中様」の目には、「このバカ、何にもわかんねえくせに勝手はことしやがって、叩き切ってやる!」みたいな光線が出ていた。
「勝村よ。カブトムシがガードレールにとまるのか?あん?少しは考えて行動しろよ。バーカ!」と言われた。
実際には、「勝村さん、カブトムシはガードレールにとまらないでしょ」だったと思うけど、「一騎田中」の目を見ていると、恐くて、そんな風に聞こえてしまった。
しかし、もーしっかりと取り付けてしまったので、仕掛け直すのは面倒くさいし大変なので、「もーそのままでいいっすよ」と半笑いで言われた。
しかも「このガードレールにカブトムシが付いてたら、僕の大事なヘラクレスオオカブトをあげますよ」なんて事もで言われた。
少し恥ずかしかった。
そして夜。第二のトラップ。
昼間のうちに、じっくり選んだ場所にトラップを仕掛けた。
大掛かりなトラップなので、三人で懸命につくった。
いよいよ発電機をまわし、明かりを灯した。
全員で拍手。
感動した。
これで、「カブじゃ公園」(こんなんだっけ?)計画にリーチがかかった。
「光が安定するまで休憩しましょう」と自信たっぷりに微笑む「一騎田中様」が、コンバットのサンダース軍曹に見えた。(知らない人ごめんね)
なんて頼もしい。
休み始めたと思ったら、光が安定もしていないのに虫が集まり始めた。
「うぉー」思わず全員が叫んだ。
小さな虫や、蛾が多かった。
ここで「一騎田中軍曹様」が、「最初のうちは小さな蛾などが多いです。時間が経つと、蛾のサイズがどんどんでかくなってきます。カブトムシなどの甲虫は身体が重く飛ぶのが大変なので、明かりを見つけてから到着するまで時間がかかるのです。まー、後、一時間もすれば、がんがん飛んできますよ」
さすがプロ。さすが軍曹。虫を知りつくしている。
説明も論理的で淀みがない。
「軍曹」の説明の途中にもどんどん虫が集まっている。しかも説明通りで、蛾のサイズが大きくなってきている。その中にカミキリ虫等の甲虫も見られるようになってきた。その度に僕らは歓声をあげる。
歓声が悲鳴に変わったのは、蛾のサイズがマックスに達したからだ。
な、なんと、僕の手のひらくらいの「怪物みたいな俄」くんたちが(「蛾い物」と名付けた)(あんまりうまくない)バサバサと音をたてて現れ始めた。鱗粉をまき散らし、僕らに向かってくる輩までいる。
あちらこちらで悲鳴が聞こえる。しかし僕には、逃げ惑いながらも聞こえて来る悲鳴に酔いしれていた。
代々木公園で歓びの声をあげる子供達。
木々の間を疾走する正三じいちゃん。
飛び回るカブトムシ。
しかも全部度アップ。
そんな映像が僕の頭の中を走馬灯の様にまわっている。
さー、後は僕らのヒーロー、カブトムシだ。
そして待つ事三時間。
ヒーローは未だ現れない、、、、、、。
映画だったら既に街は破壊されている。
「軍曹」の額や背中が冷たい汗でびっしょりになっている。
そして一言。「場所かえましょう」
僕とマギー、そして疲れの見えてきたスタッフの冷たい視線に耐えられなかったのか、「田中」は(もー軍曹ではなくなっている)一人、トラップを片付け始めた。
場所を移し、気分も新たにした。
「田中」は、「すみません。ここかさっきの場所か迷ったんですが、初めからここにすればよかったんです。」少し引きつり気味に「田中」は言った。
スタッフも、ここではもう失敗は許されない。
作品の出来が変わってしまうからだ。
ディレクターが離れた場所で考え込んでいる。
多分、オプションを繋ぎ始めているのだろう。
才能のあるディレクターは、ロケに入る前に様々なオプションを用意している。
ノー天気に、「山に行けばカブトムシがたくさん捕れる」。
なんて考えてはいないのだ。
たくさん捕れた時。
少ししか捕れない時。
全然捕れなかった時。
をロケに行く前から予測して、現場でのイレギュラーを楽しむ。
ノー天気にカブトムシがうじゃうじゃ捕れると思っていたのは、僕とマギーだけだ。
「田中」なんて書いているが、田中さんだって、そーゆー予測は当然している。
なにせ相手は自然だ。人間の考えなど軽く一蹴されてしまう。
だから田中さんも昼のうちに数カ所ポイントは、当然の様に押さえている。これもプロの作業の一つである。
さー、時間もなくなってきた。既に12時をまわっている。5時前には空が明るくなる。第一のトラップも仕掛けてある。あまり遅くなると折角集まっているカブトムシが帰ってしまう。
明かりがついた。またしても小さな虫がすぐに集まってくる。
しかも今回は、大きな虫たちの集まりが早い。汗が引き、目に力の戻ってきた田中さん。小さな声で「ここはいいですよ」と呟く。
またしても、悲鳴があがった。
笑っちゃうくらいの「蛾い物」が、ぶっさぶっさと飛んで来る。
見た事のないサイズに、僕らは悲鳴をあげる事しか術がないのだ。
楽しいし、恐いし、もう、たまらない快感である。
悦楽にひたる僕ら。
続く。