恩返し(続き) / 2006年07月09日
気を失っていた「うんこ」は、子猫達の「ミャーミャー」と鳴く名古屋弁で目覚めた。
刹那と永久の裂け目のような場所で「うんこ」は目覚めた。
(その前に、このまま自分を「うんこ」呼ばわりしていていーのかしらん?
「主」から「元主」。そして「うんこ係」。現在「うんこ」。
随分と簡単に落ちて行ったものだ。まるで人生。昇るのは大変だし時間がかかる。しかし落ちていくのは、まー、いーか。そんな事)
なんだ?こいつらは?
頭が揺れ、目が霞んだ。
少しづつ霧が晴れる様に意識が戻ってきた。
レンズのフォーカスが合う様に、世界の輪郭が一つになった。
子猫達は「ミャーミャー」名古屋弁で鳴き続けている。
軽い目眩を起こしている自分に気づいた。
「落ち着け」自分に言い聞かせた。
「落ち着け」と手のひらに3回書いて飲んだけど効果がなかった。
とにかく落ち着いて考えた。
素早く自分の脳の情報を集めた。
パニックを起こすのは、情報が足りないからだ。
考えながら左手の指を動かした。左脳だけでなく、右脳を多めに使いたいからだ。想像力をフル回転させなければ、目の前の現実を受け止めきれない。
Q1 何故、「黒茶くん」は網戸越しにとはいえ、人間に体当たりしてきたのか?
A 人間を憎んでいたから?
否。
Q2 何故、人ん家の、夢の劇場とはいえ、「黒茶くん」はあんなに堂々とデー
ンとし続けていられたのか?
A 生まれもってのジャイアン体質だから?
否。
Q3 何故、「黒茶くん」は小さめの身体なのに、お腹だけが膨れていたのか?
A 実は、猫相撲の世界で、舞の海と呼ばれていたから?
否。
自問自答を繰り返した。
が、答えは簡単だった。
メスだったのだ。
妊娠していたのだ。
子供を守る為に回りの全てを威嚇していたのだ。
「うんこ」(僕)は走った。トイレにではなく、台所に走った。
冷蔵庫を開け、ミルクをレンジで少し温め、子猫達にあげた。
この写真は、3年前「はなまるマーケット」に出演した時に撮ったものです。
10日にまた出演するので、打ち合わせしてたらスタッフが持って来てくれた。
今回は写真出せないと思っていたのに、何と言う偶然!神が近くにいるね。
写真の窓の奥にある白いのが、牛乳の入ったお皿で、まわりの黒っぽいのが「黒茶さん」の子供達。
すると、「黒茶くん」、いや「黒茶さん」(女子だから)は、喜ぶどころか、 「うんこ」(僕)を激しく威嚇し、子猫達より先にミルクを飲みまくった。
何だ!こいつ?母親のくせに、大人げない。フン!
同じ事を数週間続けた。子猫達は、目も開き、身体もしっかりしてきた。
たくましく、がしがし成長して行った。
しかし「うんこ」(もー、ここからは僕って書かない)は、どーしてもかわいい子猫達を育てている父親気分になれなかった。
何故なら、物心ついた子猫達が、ミルクをあげに行く「うんこ」に対し、母親同様、全員で激しい威嚇を始めたからだ。
全員一丸となって、逆毛を立てて「フーフー」言っている。
「ミャーミャー」から「フーフー」
名古屋弁からレイザーラモンHG何かの先触れかと勘ぐったが、もちろん意味など無い。
こんなことがあっていいのか?
人格が、いや、「うん格」の崩壊の危機だ。
しかしうんこ(僕。そろそろ書いとかないと皆忘れている頃だろう)は頑張った。
親子の威嚇に動じる事無くミルクをあげ続けた。
がしがし育った子猫達は、それぞれ外出する様になった。
「黒茶さん」も現れる回数がぐっと減り、ついには、姿を消した。
子猫達も戻って来る時間や、数が減ってきた。
「うんこ」(僕)は複雑な想いに包まれた。
結局、一匹もなつかなかった。
子猫達もすっかり姿を現さなくなった。
寂寞感。うすら恥ずかしい言葉に包まれた。
しかし「うんこ」(僕)は、「主」(もちろん、僕)に戻った。(ややこしい)
感無量だった。
昔、かえるにされた王子が人間に戻った時に、こんな感情が湧いたのかも知れない。(違うな)
ある時、主は「夢の劇場」に小さな黄金色に輝く物を見つけた。
よく見ると、干涸びた金魚だった。
頭がパニクった。どんなに頭の中の情報を集めても左手を動かし続けても、パニックは収まらない。
そして最終的に、、、、主は見なかった事にした。
簡単に言えば、現実逃避。
だって訳わかんないんだもん。
さらに主は数日後、「夢の劇場」の奥に黒光りするぞうきんを見つけた。
「何だよ、こんなとこに」と思い、片付けに行った。
それは「ぞうきん」ではなく、死んだ大きなねずみだった。
主は気を失った。
続く。(もーいいか。)
気を失った主は、「黒茶さん」の夢を見た。
蓮の花が咲き乱れる池に浮かぶ、大きな白い貝の中で着物を着て、満面の笑みを浮かべた「黒茶さん」がお茶をたててくれた。
雷を受けた様に意識を取り戻した主は、理由がわかった。
それは、猫の「恩返し」だった。
「恩返し」の方程式は、助ける=幸福になる じゃなかったのか?
ボランティア=ビッグハッピーは?
フエアー イズ マイ シャングリラ?
よくよく考えてみれば、「恩返し」のお返しの幸福は「両刃の剣」だった。
よひょうは、幸福をもらい、痛いくらいの悲しみを一生背負った。
浦島太郎は、大宴会のかわりに人生を失った。
僕なんかミルクのかわりに気を失った。(何だそれ?)
もちろん、一時的ではあるが、主というポジションも失った。しかも、うんこという称号まで戴いた。今月で43歳になろーとしているのに、、、
代償としては小さいが、引き裂かれた気持ちは他とかわらない(何せ、43歳で「うんこ」呼ばわりだ)しかも、幸福を手に入れるどころか、金魚もねずみも自
分で片付けた。掃除のおじさんだ。
希望なんて何処にもありゃしないんだ。
「恩返し」の方程式は間違っていた。
いや、「恩返し」には方程式など元々存在しないのだ。
いや、やっぱり存在した。(はっきりしろ)
幸せ=不幸せ
これが正しい「恩返し」の方程式だったのだ。
幸せの絶対量は決まっていたのだ。
「恩返し」とは、神の試練だったのだ。
愛の形を試されていたのだ。期待なんてクソだ。生きる事は戦いだ。
報酬を求める事など、神に対する謀反だったのだ。
「感謝だ!」
全ては感謝なのだ。
本当の「愛」とは、無報酬なのだ。
新宿のホストクラブでもないのだ。(説明しない。)
無報酬の「愛」こそ真実なのだ。
相手に何かを求めるから駄目なんだ。
人間は一人で生きる動物なのだ。
群れて楽しちゃ駄目なんだ。たまたま、まわりに人がいる。
だから楽が出来る。一人で生きて行くのは不可能だかんね。
その事に感謝して生きなければならなかったのだ。
何かを期待するから、金魚なんだ。死んだ大きなねずみだったんだ。
神様ごめんなさい。僕は間違ってました。
毎日全てに感謝して生きてゆきます。
最後に僕は一つだけ言いたい事がある。
こんな、自分でも想像さえしなかった長い長い文章を、時間を割いて読んでくれ
た皆様に心から感謝します。
了
刹那と永久の裂け目のような場所で「うんこ」は目覚めた。
(その前に、このまま自分を「うんこ」呼ばわりしていていーのかしらん?
「主」から「元主」。そして「うんこ係」。現在「うんこ」。
随分と簡単に落ちて行ったものだ。まるで人生。昇るのは大変だし時間がかかる。しかし落ちていくのは、まー、いーか。そんな事)
なんだ?こいつらは?
頭が揺れ、目が霞んだ。
少しづつ霧が晴れる様に意識が戻ってきた。
レンズのフォーカスが合う様に、世界の輪郭が一つになった。
子猫達は「ミャーミャー」名古屋弁で鳴き続けている。
軽い目眩を起こしている自分に気づいた。
「落ち着け」自分に言い聞かせた。
「落ち着け」と手のひらに3回書いて飲んだけど効果がなかった。
とにかく落ち着いて考えた。
素早く自分の脳の情報を集めた。
パニックを起こすのは、情報が足りないからだ。
考えながら左手の指を動かした。左脳だけでなく、右脳を多めに使いたいからだ。想像力をフル回転させなければ、目の前の現実を受け止めきれない。
Q1 何故、「黒茶くん」は網戸越しにとはいえ、人間に体当たりしてきたのか?
A 人間を憎んでいたから?
否。
Q2 何故、人ん家の、夢の劇場とはいえ、「黒茶くん」はあんなに堂々とデー
ンとし続けていられたのか?
A 生まれもってのジャイアン体質だから?
否。
Q3 何故、「黒茶くん」は小さめの身体なのに、お腹だけが膨れていたのか?
A 実は、猫相撲の世界で、舞の海と呼ばれていたから?
否。
自問自答を繰り返した。
が、答えは簡単だった。
メスだったのだ。
妊娠していたのだ。
子供を守る為に回りの全てを威嚇していたのだ。
「うんこ」(僕)は走った。トイレにではなく、台所に走った。
冷蔵庫を開け、ミルクをレンジで少し温め、子猫達にあげた。
この写真は、3年前「はなまるマーケット」に出演した時に撮ったものです。
10日にまた出演するので、打ち合わせしてたらスタッフが持って来てくれた。
今回は写真出せないと思っていたのに、何と言う偶然!神が近くにいるね。
写真の窓の奥にある白いのが、牛乳の入ったお皿で、まわりの黒っぽいのが「黒茶さん」の子供達。
すると、「黒茶くん」、いや「黒茶さん」(女子だから)は、喜ぶどころか、 「うんこ」(僕)を激しく威嚇し、子猫達より先にミルクを飲みまくった。
何だ!こいつ?母親のくせに、大人げない。フン!
同じ事を数週間続けた。子猫達は、目も開き、身体もしっかりしてきた。
たくましく、がしがし成長して行った。
しかし「うんこ」(もー、ここからは僕って書かない)は、どーしてもかわいい子猫達を育てている父親気分になれなかった。
何故なら、物心ついた子猫達が、ミルクをあげに行く「うんこ」に対し、母親同様、全員で激しい威嚇を始めたからだ。
全員一丸となって、逆毛を立てて「フーフー」言っている。
「ミャーミャー」から「フーフー」
名古屋弁からレイザーラモンHG何かの先触れかと勘ぐったが、もちろん意味など無い。
こんなことがあっていいのか?
人格が、いや、「うん格」の崩壊の危機だ。
しかしうんこ(僕。そろそろ書いとかないと皆忘れている頃だろう)は頑張った。
親子の威嚇に動じる事無くミルクをあげ続けた。
がしがし育った子猫達は、それぞれ外出する様になった。
「黒茶さん」も現れる回数がぐっと減り、ついには、姿を消した。
子猫達も戻って来る時間や、数が減ってきた。
「うんこ」(僕)は複雑な想いに包まれた。
結局、一匹もなつかなかった。
子猫達もすっかり姿を現さなくなった。
寂寞感。うすら恥ずかしい言葉に包まれた。
しかし「うんこ」(僕)は、「主」(もちろん、僕)に戻った。(ややこしい)
感無量だった。
昔、かえるにされた王子が人間に戻った時に、こんな感情が湧いたのかも知れない。(違うな)
ある時、主は「夢の劇場」に小さな黄金色に輝く物を見つけた。
よく見ると、干涸びた金魚だった。
頭がパニクった。どんなに頭の中の情報を集めても左手を動かし続けても、パニックは収まらない。
そして最終的に、、、、主は見なかった事にした。
簡単に言えば、現実逃避。
だって訳わかんないんだもん。
さらに主は数日後、「夢の劇場」の奥に黒光りするぞうきんを見つけた。
「何だよ、こんなとこに」と思い、片付けに行った。
それは「ぞうきん」ではなく、死んだ大きなねずみだった。
主は気を失った。
続く。(もーいいか。)
気を失った主は、「黒茶さん」の夢を見た。
蓮の花が咲き乱れる池に浮かぶ、大きな白い貝の中で着物を着て、満面の笑みを浮かべた「黒茶さん」がお茶をたててくれた。
雷を受けた様に意識を取り戻した主は、理由がわかった。
それは、猫の「恩返し」だった。
「恩返し」の方程式は、助ける=幸福になる じゃなかったのか?
ボランティア=ビッグハッピーは?
フエアー イズ マイ シャングリラ?
よくよく考えてみれば、「恩返し」のお返しの幸福は「両刃の剣」だった。
よひょうは、幸福をもらい、痛いくらいの悲しみを一生背負った。
浦島太郎は、大宴会のかわりに人生を失った。
僕なんかミルクのかわりに気を失った。(何だそれ?)
もちろん、一時的ではあるが、主というポジションも失った。しかも、うんこという称号まで戴いた。今月で43歳になろーとしているのに、、、
代償としては小さいが、引き裂かれた気持ちは他とかわらない(何せ、43歳で「うんこ」呼ばわりだ)しかも、幸福を手に入れるどころか、金魚もねずみも自
分で片付けた。掃除のおじさんだ。
希望なんて何処にもありゃしないんだ。
「恩返し」の方程式は間違っていた。
いや、「恩返し」には方程式など元々存在しないのだ。
いや、やっぱり存在した。(はっきりしろ)
幸せ=不幸せ
これが正しい「恩返し」の方程式だったのだ。
幸せの絶対量は決まっていたのだ。
「恩返し」とは、神の試練だったのだ。
愛の形を試されていたのだ。期待なんてクソだ。生きる事は戦いだ。
報酬を求める事など、神に対する謀反だったのだ。
「感謝だ!」
全ては感謝なのだ。
本当の「愛」とは、無報酬なのだ。
新宿のホストクラブでもないのだ。(説明しない。)
無報酬の「愛」こそ真実なのだ。
相手に何かを求めるから駄目なんだ。
人間は一人で生きる動物なのだ。
群れて楽しちゃ駄目なんだ。たまたま、まわりに人がいる。
だから楽が出来る。一人で生きて行くのは不可能だかんね。
その事に感謝して生きなければならなかったのだ。
何かを期待するから、金魚なんだ。死んだ大きなねずみだったんだ。
神様ごめんなさい。僕は間違ってました。
毎日全てに感謝して生きてゆきます。
最後に僕は一つだけ言いたい事がある。
こんな、自分でも想像さえしなかった長い長い文章を、時間を割いて読んでくれ
た皆様に心から感謝します。
了