tennis365.net テニス365ブログ 新着記事を読む ]    [ テニス365 ホームショッピングニュースログイン ]


勝村政信プロフィール
俳優。「天才たけしの元気がでるテレビ」で注目を浴び、その後演劇活動をメインに行い現在に至る。飄々としたスタイルで芸幅の広さをアピールする一方、舞台演技の評価は高い。最近では「ラスト・クリスマス(フジテレビ)」、「HERO(フジテレビ)」、「義経(NHK)」等に出演し活躍している。趣味はサッカー、テニス、フィットネスなどスポーツ全般。
出演情報
レギュラー  TVasahi「ナサケのオンナ~国税局査察官~」 出演

毎週木曜21:00~21:54
ナレーション  NHK「スポーツ大陸 一歩一歩に魂こめて~競歩 山﨑勇喜~」 OA
10/16(土)22:00~(BS1)
10/17(日)10:05~(総合)
10/19(火)24:15~(関西総合)
10/24(日)24:00~(BS1)
9/25より公開  熊沢尚人監督「君に届け」 出演
9/18より公開  羽住英一郎監督「THE LAST MESSAGE 海猿」 出演
4/10より公開  石原興監督「獄(ひとや)に咲く花」 出演
3/13より公開  谷口正晃監督「時をかける少女」 出演
CF  「セイロガン ト-イA」
CF  FUJITSU「夢をかたちに(社会システム空港篇)」
<<  2007年 5月  >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
最近の記事
7月の5
07/30 17:41
7月の4
07/30 17:38
7月の3
07/30 17:34
7月の2
07/19 12:32
7月の1
07/19 12:28
カテゴリ別アーカイブ
最近のコメント
あなたは、将来の歯の…
professional resume writers 10/29 21:11
あなたの土が適切に排…
curriculum vitae in english 10/29 21:09
小犬ドゥーリーのは地…
motivation letter university 10/29 21:07
小犬ドゥーリーのは地…
motivation letter university 10/29 21:06
・・ヨ・ソ・・・ヨゥ…
カバ セリーヌ 10/16 18:21
最近のトラックバック
【サンプル動画】誰も…
09/12 17:06
女子バレーボール 狩…
09/12 12:55
ミラ・ジョボビッチ …
09/12 12:05
勝村政信さんのブログ
01/25 09:04
舞台稽古中の妻夫木く…
11/20 07:57
このブログサービスは「テニス365 テニスブログ」で運営しています。テニス365会員なら無料でご利用・作成いただけます。






冬の行水 その3 / 2007年05月16日

小学三年生の時に、市が区画整理を始めた。
大工さんが家にきて、新しい家の相談をしていた。

僕の家の二階のベランダの下がちょっとした庭になっていた。
そこには、ベランダから紐をたらして作った、ちょっとしたブランコがあった。

そのブランコは近所の子も勝手に使っていた。

夕方、夕日で紅く染まったブランコが、風で少し揺れていた。


僕の家のまわりが、全て新しくなった。
みんなうきうきしていた。
道路も全部アスファルトになった。
みんなの顔も輝いていた。
どんどん素敵な世の中になる。
みんなそー思っていた。
みんなしあわせだった。
トイレだって全部水洗。
もー、臭くない。
ホースの先に軟球をつけた「バキュームカー」もこない。

せいせいした。

人や町が力強く見えた。
古い家が壊されて新しい家が建った。
建てている間はプレハブの仮住まいだった。

楽しかった。

知らない人が両隣に住んでいたり、お店が近かったり、部屋の中の鉄骨にぶら下
がったりして遊んだ。

引っ越しの日。

しあわせの頂点だった。

そう、有頂天。

家の中全部新しい匂い。
畳の鼻をつく香りに包まれ、新しい食器に囲まれ、新しいふかふかの布団で寝た。

しあわせが「肉眼」で見えた。


庭がかなり小さくなった。

そして、ブランコはなくなっていた。

新しい家には沸かせる風呂があった。

シャワーがついている。

ひねるとお湯がでる。



僕は泣きはじめた。



それは、
「棺桶」をなくした涙だった。
「ブランコ」をなくした涙だった。
「新しさ」を獲得した涙だった。
「不便」を喪失した涙だった。
どうしていいかわからない涙だった。


しばらく泣き続けた。





僕が死んだら、うんこを漏らした友達を洗ってくれた
あの「棺桶」に入りたい。

プラスチックの、持つとこにビニールのヒモのついた中途半端な水色の
あの「棺桶」に入りたい。

もう一度、真冬に行水がしてみたい。

あの「棺桶」で。

入る前には、いちいち台所で、薬缶やら、家で一番大きな鍋やらでお湯を何度も
沸かし、棺桶に溜めて。
入る前には、いちいち台所で、薬缶やら、家で一番大きな鍋やらでお水を何度も
運び、棺桶のお湯をうめて。

寒くて寒くて、お湯がすぐに冷めてしまうので、何度も沸騰したお湯をつぎ足す。
そこだけ熱くなるから、笑いながら「あっちい、あっちい」って言いながら、笑
いながら「あっちい、あっちい」って勢いよくかき回す。

あがると母が大きなタオルを広げて待っていてくれる。
拭いてるそばから身体が冷えてくる。


死んだ僕は、中途半端な水色の、あの「棺桶」の中で
ゆっくりと目を瞑り、ゆっくりと耳を澄ます。


すると、近所のお母さんたちの井戸端会議が何処からか聞こえてくる。



そして、死んだ僕の口元がゆっくりと「ゆるみ」はじめる。
エッセイ風 | 投稿者 勝村政信 11:18 | コメント(13) | トラックバック(0)